職場で社員同士がケンカになり、一方の社員がケガをしました。このような場合も労災の対象になるのでしょうか?(海老名市 小売業A社)
ケンカが原因であっても、労災と認定される可能性があります。ただし、すべてのケースで認められるわけではなく、ケンカに至った経緯や状況によって判断が分かれます。
労災というと、機械に手を挟まれたり、 転倒・転落といった事故のイメージがあるため、ケンカによるケガは労災にならないと思われがちですが、一定の要件を満たせば労災と認められる場合があります。
最終的な判断は労働基準監督署により行われますが、どのような要件を満たすとケンカによるケガが労災となるか(労災となる可能性が高いか)以下ご説明させていただきます。
労災と認定されるには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要件をいずれも満たす必要があります。「業務遂行性」とは、事業主の支配・管理下で業務に従事しているときに生じたものであるかという判断基準です。一方、「業務起因性」は、仕事が原因かどうかという判断基準を指します。
<業務遂行性>
就業時間中・事業場内でケンカが発生した場合であれば、原則として認められます。また、休態時間中や出張中に起きた場合も、事業主の支配下であるため、同様に認められます。
<業務起因性>
ケンカの原因が仕事なのかどうかで判断します。私的な恨みなどが原因の場合は、就業時間中・社内であっても認められません。
ポイントは、ケンカの「場所・時間」だけでなく 「原因」が問われるという点です。もっとも「原因が仕事なのかどうか」は、判断が難しいケースも少なくありません。
続いて、具体例をもとに、労災と認められる可能性が高いケースと認められない可能性が高いケースを紹介いたします。
◆労災となる可能性が高いケース
①業務上のミスをめぐるケンカによるケガ
業務上のミスをめぐるケンカでケガをしたケースで、労災と認められた裁判例があります。クレーン作業中に同僚との意思疎通の行き違いをきっかけとして起きたケンカで殴られた事案で、裁判所はケンカの原因が本来の業務にあったと判断しました。
②社員同士のケンカを仲裁し、巻き込まれてのケガ
上司が社員同士のケンカを仲裁しようとしてケガを負った場合も、労災と認められやすいケースです。部下同士のけんかを仲裁するのは管理職としての役割であり、業務起因性が認められます。
◆労災とならない可能性が高いケース
①個人的な恨みが原因のケンカによるケガ
就業時間中に職場で起きた社員同士のケンカであっても、恋愛関係のもつれや金銭の貸し借りなどのプライべ一トな人間関係のトラブルが原因のケンカは、業務とは無関係と見なされ、業務起因性が否定されます。つまり、労災とは認められません。
②過度な挑発行為によって引き起こされたケンカによるケガ
業務上のやり取りから派生した職場でのケンカであっても、労災が認められなかったケースもあります。工事現場で起きた大工同士のケンカの事例では、 業務上のやり取りから生じたケンカではあるものの、挑発行為から暴行に発展した点を踏まえ、業務起因性はないと判断されています。