物価高騰の影響を考え、ひとまず1年間に渡り、月額10,000円のインフレ手当を支給することとしました。この手当は割増賃金の計算の基礎に含めなければならないでしょうか?(町田市 製造業L社)
石油や電気といったエネルギ一関連の他、生活に必要なさまざまな物資の価格が上昇している中で「インフレ手当」といった名称で従業員に特別の手当を支給する企業が増えています。
今回のご質間は、これと割増賃金との関係になりますが、労働基準法第37条第5項では、次に掲げる賃金は、割増賃金の基礎となる賃金には算入しないとしております。
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらは「限定列挙」とされているため、上記のいずれかの除外賃金に該当しないものは、計算の基礎から除外することはできません。
ご質間のインフレ手当については、①~⑤の手当とは明らかに異なり、また、毎月支払われるため、「⑦1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金」にも該当しないと考えます。
よって、「⑥臨時に支払われた賃金」に該当するかどうかを検討することになります。この「臨時に支払われた賃金」とは、通達により「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、且つ非常に稀に発生するものをいう」(昭22.9.13 発基17) とされており、名称のいかんにかかわらず、これに該当しないものは「臨時に支払われた賃金」とはみなさない、とされています。
※具体的には、傷病見舞金や結婚祝金、定年退職によらずに支給される退職金等、支給事由の発
生が不確定であり、かつ非常に稀に発生するものが「臨時に支払われた賃金」に該当するとさ
れております。
ご質問のインフレ手当は、物価高騰を踏まえて設けられたものであり、当面の間(1年間)継続的に支払われるようですので、臨時的、突発的事由によるものとはいえないと考えられます。
上記から、インフレ手当は、割増賃金の計算の基礎から除くことはできず、含めなければならないと考えます。