業績の悪化により人員削減を検討しています。具体的には退職勧奨の実施を考えていますが、退職勧奨を行う際の注意点があれば教えて下さい。(製造業O社)
退職勧奨は、会社が従業員に対して退職するよう働きかけるもので、従業員がこれに応じて退職すると合意解約が成立します。解雇や希望退職の募集との違いは、例えば解雇は、使用者側の一方的な契約終了の意思表示であり、従業員の意思は関係ありません。また、希望退職の募集は、条件に該当するすべての従業員が対象となり、応募してきた人に退職してもらうシステムでトラブルが少なく比較的安全な策と言えますが、やめて欲しくない従業員に退職されてしまう恐れがあります。
一方、退職勧奨は、会社が選んだ特定の従業員にのみ働きかけることができるため、これを選択する会社も少なくありません。
なお、退職勧奨を行う場合、以下のような行為を避けなければなりません。
●長期にわたって行う、1対多数で説得をするなど、働きかけを執拗に行うこと
●仕事を与えない、他の従業員の目があるところで罵倒するなど、従業員の名誉等を傷つけるような嫌がらせをして追い込むこと
●従業員からの「応じなかった場合どうなるのか?」という問いに、正当な理由なく解雇・減給など、退職に応じるしかないと誤認させるような回答をすること
●検討の時間を与えず、「即決を求める」ような働きかけを行うこと
また、スムーズに退職勧奨に応じてもらうために、退職金の上乗せや再就職のあっせんなど従業員にとって良い条件を提示するのも一つです。解雇ではないことを示す重要な証拠として、退職合意書の締結を検討しても良いでしょう。
その他、雇用保険上、退職勧奨に応じた退職は「会社都合」での退職となります。応じた従業員にとっては失業給付の給付制限期間が短い、給付日数が長くなる等のメリットがありますが、会社は助成金の申請に影響が出るため注意が必要です。