年次有給休暇の取得に関し、新規付与分から消化させることは問題ないでしょうか?(建設業A社)
労働基準法では、年次有給休暇について、繰越分と新規付与分のどちらから消化させるかを規定していません。よって、どちらの運用で行うかは、それぞれの会社の取り決めによることになります。
年次有給休暇は、2年間その権利を行使しなかった場合、時効により消滅するため、会社としては新規付与分から消化させたいという考えもあると思います。
例えば、ある年度に14日の年次有給休暇が付与され、それを1日も使わなかったとすると、次年度に14日が繰り越され、かつ新年度に16日の新規分が付与されると、合計30日の年次有給休暇を保有することになります。この状態で10日間の年次有給休暇を取得した場合、繰越分から消化すると繰越分の残が4日、新規付与分の残が16日となります。一方、新規付与分から消化すると繰越分の残が14日、新規付与分の残が6日となります。この状態で次年度になった場合、前者だと16日が繰り越され、後者だと6日が繰り越されます。
このようにそれぞれの取扱いにより、年次有給休暇の残日数に大きな差が出てくるため、労使トラブルに発展しないためにも、新規付与分から消化させる場合は、就業規則にその旨を明記するとともに、従業員への周知はもちろんのこと、当該内容の説明を十分に行うことが重要であると考えます。
なお、現在就業規則にその定めがなく、新たにその旨を定め当該運用を行う場合は、労働条件の不利益変更に該当するため、慎重に行う必要がございます。