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突然「退職代行サービス」の会社から連絡がありました。会社はどのように対応すれば良いのでしょうか?(製造業 N社)

1.「退職代行サービス」とは

 

 近年、「退職代行」というサービスを利用する人が増えています。本人が直接会社に退職の意思を伝えることが難しい場合に、第三者が代行して退職の意思を伝えるサービスです。

退職代行をおこなう業者には、主に以下の3種類があります。

 

・弁護士による退職代行

・合同労働組合(ユニオン)による退職代行

・その他の民間業者による退職代行

 

 弁護士やユニオンの場合は使用者と直接交渉ができます。たとえば残った年次有給休暇の消化などの交渉です。一方、その他の民間業者は、あくまでも労働者の意思を伝えるだけです。労働者の代わりに使用者と交渉することはできないという位置づけになっています。

 

 

2.「退職代行サービス」への対応

 

 退職代行業者から連絡があった場合、企業側は冷静かつ適切に対応する必要があります。「自分で言いに来い」と門前払いしたり、「代わりの人が入るまでは辞めさせない」などと無理に引き留めるようなことは避けなければなりません。

 

 いずれにしても民法の規定上、退職の意思表示から2週間たつと雇用契約は終了します。お金を払って業者に依頼してまで退職したいのですから無理に引き留めても退職の意思が覆る可能性は低いでしょう。それよりも、スムーズに退職手続きを進めることに注力した方が良いと考えます。

 

 退職代行業者から連絡がきたときに企業がとるべき主な対応は次のとおりです。

 

①連絡してきた者が何者なのか確認

まず、連絡してきた者が何者なのか、冒頭で紹介した3種類のうちどの業者に該当するのかを確認します。退職代行業者を装って詐欺や嫌がらせの可能性もあるからです。

 

②労働者本人からの依頼なのか確認

退職代行が本当に労働者本人からの依頼にもとづくものなのかを確認します。具体的には、労働者本人が署名した委任状や契約書、社員証のコピーなどを提示してもらいます。

 

③退職日や引継ぎ等の調整

退職日は、労働者本人の希望と就業規則を照らし合わせて決定します。自分で直接退職したいと言えないほどですから出社して引き継きをさせるのは難しい場合もあるでしょう。必要に応じて「メールでの引き継きを依頼する」など現実的な方法で進めましょう。

 

④退職届の送付を依頼

退職日が決まったら、労働者本人に退職届の送付を依頼します。後でトラブルになるのを避けるためにも退職届は提出してもらいましょう。その際、必要があれば秘密保持誓約書や競業避止義務に関する誓約書にもサインしてもらいます。

 

⑤貸与物の返還、私物の整理

パソコンや社員証、制服など、会社が貸与したものは確実に返還してもらいます。会社に私物が残っている場合は退職日までに取りに来てもらう、あるいは着払いで送るなど、取り扱いを決めておきましょう。

 

 「退職の申し出すら自分でできないなんて…」と腹立たしい気持ちになるかもしれませんが、突然音信不通になって退職の手続きもできない状態になるよりは、第三者が間に入ることでスムーズに手続きを進められるという点では会社にとってもメリットがあると考えることもできます。

 

 

3.職場環境の見直し

 

 退職代行を利用する労働者の中には、職場の人間関係に悩んでいる人もいます。退職したいと言い出せるような関係ではなかったり、過去に退職したいと申し出た同僚が上司からどのような扱いを受けていたかを見て自分で直接言うことができなかったというケースもあるでしょう。

 

 退職代行から連絡がきたということは、社内に何か大きな問題があるのかもしれません。労働者が意見を言いやすい職場環境になっているか、見直してみることも大切でしょう。

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