現在テレワークの導入を検討しており、事業場外みなし労働時間制を適用しようと考えていますが、問題はないでしょうか?(小売業D社)
厚生労働省が令和3年3月に公表した新しいガイドラインでは、労働基準法に定められた全ての労働時間制度でテレワークが実施可能と記載されています。労働時間制には、原則的な労働時間制の他、フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、裁量労働時間制などがあります。
テレワークにおいては、家庭の用事などで一時的に仕事から離れざるを得ないときもあると思います。そのため、実労働時間にこだわり数分でも労働しなかった時間を記録させるのか、あるいは一定程度のことは容認するのか、またはみなし労働時間として扱うのか、など労働時間管理について検討することになります。
ご質問の「事業場外みなし労働時間制」は、労働者が事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに適用される制度で、一般的には直行直帰の営業職や出張などに適用されることが多い制度と言えます。
この制度を適用した場合は、実際の勤務時間にかかわらず、所定労働時間勤務したものとみなされます。前述のとおり「使用者の具体的な指揮監督が及ばない」ことが適用要件であり、「随時使用者の具体的な指示に基づき行われている場合」は適用できません。
そのため、テレワークでも頻繁にメールや電話で業務の指示をすることは可能であるため、このような場合にみなし労働時間制を適用できるかどうかが問題になります。
厚生労働省は、テレワークにおいて次の①②いずれもの条件も満たす場合に、制度を適用することができるとしています。
①パソコンなどの情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態にされていないこと
具体的には、次の場合などは、要件を満たすとされています。
・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断できること
・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いておこなわれるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができること
・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答をおこなうか否か、または折り返しのタイミングについて労働者が判断できること
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
具体的には、次の場合などは、要件を満たすとされています。
・使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではないこと
このように、一定の条件を満たす場合は、テレワークにおいても事業場外みなし労働時間制を適用することができます。ただし、みなし労働時間制の様に、実労働時間にかかわらず一定時間勤務したものとみなす制度は、長時間労働のリスクもはらんでいるため、その点注意が必要です。