社員が3回遅刻した場合、1日分の賃金をカットするようにしたいと考えますが、問題ないでしょうか?(町田市 情報通信業O社)
従業員が遅刻や早退をした際、その時間数分の賃金を支払わないという取扱いをされている企業は多いでしょう。これは、実際に労務の提供をしていない部分については賃金が発生しないという「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づくもので、法令上問題ありません。
しかし、遅刻した時間数分を超えて賃金を控除するような場合、例えば3回遅刻した際に(遅刻した合計時間が1日の所定労働時間に満たないにも関わらず)1日分の賃金を控除するような取り扱いを行っている企業をたまに目にしますが、これは労働基準法第24条の賃金全額払の原則に反することになり、違法となります。このほか、30分未満の遅刻を一律に30分の遅刻とみなして賃金を控除することも違法です。
職場の秩序維持を図るため、遅刻をした際にその遅刻時間分の賃金控除を行うだけでは不十分ではないかという問題が存在します。規律の保持のためには、注意しているにも関わらず何度も遅刻を繰り返す従業員に対しては、何らかの制裁を行うことは不可欠です。よって制裁という意味において一定の減給を行おうとするのであれば、就業規則の懲戒事由の一つとして「正当な理由なく欠勤、遅刻を重ねたとき」のように定め、懲戒処分として減給の制裁を行うこととなります。
しかし、この減給の制裁については法的な制約が存在します。労働基準法第91条では「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定められています。
就業規則の懲戒処分に該当する1回の違反について、その減給の額が平均賃金の1日分の半分まででなければならず、非違行為の大小に関わらず、1事案は1回としてカウントすることになります。また懲戒処分に該当する違反行為が一賃金支払期中に複数回あったとしても、減給ができる総額はその賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えることはできませんので注意が必要です。
このように毎月の賃金での減給制裁には法的な問題が存在することから、賞与においてペナルティを課すということも有効です。賞与の支給方法については、会社の方で任意で決めることができるため、例えば遅刻1回につき1,000円を減額するという取扱いを行っている企業もあります。いずれにしても遅刻のような規律違反については、放置することなく確実に指導を行い、必要に応じ賃金面におけるペナルティを課すことが重要です。