改正雇用保険法が成立しました
改正雇用保険法が5月10日に可決・成立しました。
たくさんの改正点があり施行時期もバラバラですが、早いものでは今年10月より変更されます。
以下に主な改正ポイントをまとめてご紹介します。
<2028年10月より:週10時間以上の労働者へ雇用保険の適用拡大>
今回たくさんの改正点がありますが、会社にとって最も影響が大きいのは雇用保険の適用拡大かと思います。
現在、雇用保険の加入要件は次の3 つです。 .
①31 日以上の雇用見込み
②所定労働時間が週20時間以上
③学生でないこと
このうち②の要件が「週10時間以上」に拡大されることになりました。働き方が多様化していることにともない、雇用のセーフティネットを拡げるためです。複数の仕事をかけもちする人は、 生活のために主な賃金を受ける1つの勤務先でのみ雇用保険に加入することになります。
また、適用基準が週20時間→週10時間になったことにともない、失業給付(基本手当) の受給要件も見直されます。つまり、新たに短時間労働者用の区分が設けられるのではなく、正社員も含めてすべての人が同じ基準で給付を受けられるようにしたため、現行の20時間をもとに設けられている基準が2分の1になります。
具体的に説明すると、失業給付の受給要件に「離職前2年間に雇用保険の加入期間が通算12ヶ月以上あること」というものがあります。このとき、賃金支払いの基礎となった日数が「11日または80時間以上」ある月を1ヶ月とカウントしますが、改正後は「6日または40時間以上」を1ヶ月とカウントすることになります。
そのほか、基本手当日額の下限も現在の半額になるなどの変更点があります。
<2024年10月より:教育訓練給付金の給付率アップ>
教育訓練給付は現在、 次の3つに分かれています。
①一般教育訓練給付金
②特定一般教育訓練給付金
③専門実践教育訓練給付金
このうち、「特定一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」について、次のように追加給付が行われることになります。
【特定一般教育訓練給付金】
新たに資格取得等した場合には、受講費用の10%(上限年間5万円) を追加で支給する。
【専門実践教育訓練給付金】
現行の資格取得等を実現した場合の追加給付に加えて、教育訓練の受講前後をくらべ、賃金が一定(5%) 以上上昇した場合には、現行の追加給付を受けていることを前提として、更に受講費用の10%(年間上限8万円)を追加で支給する。
<2025年10月より:教育訓練休暇給付金の新設>
現行の制度では、労働者が自発的に教育訓練に専念するために仕事から離れる場合に、その期間の生活費を支援する仕組みがありません。そのため、 雇用保険の被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、賃金の一定割合を支給する「教育訓練休暇給付金」が新たに創設されることになりました。
教育訓練のための休暇を設けることが企業に義務付けられるわけではありません。
対象となる休暇の期間は最大1年間(途中で出産・育児などの事情があれば4年まで延長可)ですが、1年分の給付が受けられるということではありません。失業したときに受ける「基本手当」の仕組みと同じように、被保険者期間の長さに応じて90~150日分の給付日数となります。また、定期的に「認定」を受ける必要があります。
この給付金を受けると、被保険者期間がリセットされ、その後すぐに離職した場合は失業給付が受けられないことになりますが、解雇や倒産による離職の場合は特例があります。
<2025年4月より:給付制限期間の短縮・廃止>
正当な理由のない自己都合離職者に対しては、失業給付(基本手当)の受給にあたって給付制限期間が設けられています。(ただし、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合、給付制限が解除されます)
この給付制限期間は2020年10月に短縮されましたが、転職を試みる労働者が安心して再就職活動を行えるようにするため、さらに短縮・廃止されます。
具体的には、原則2ヶ月→原則1ヶ月に短縮されます。ただし「5年間で2 回を超える自己都合離職をした場合は3ヶ月」という点は現行と変わりません。
また、離職期間中や離職前1年以内に自ら教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けた場合は給付制限が解除されることになりました。
その他の改正点として、 離職者が再就職した場合の手当が廃止・縮小されます。
また、雇い止め離職者について特定受給資格者並みの水準とする基本手当の暫定措置など2024年度末で期限が到来するものについて措置を2年延長することや、国庫負担の見直しなども行われます。
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